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ヒロちゃんの友達

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みなさん、こんにちは。いかがお過ごしでしょうか。

ゴールデンウィークは、高速道路がどこまでいっても1,000円ということで、伊豆には人が少ないように感じました。みなさんは、もう1,000円のメリットを享受しましたでしょうか。

さて、久しぶりに釣りに行ってきました。
昨年は子供の受験があって一度も釣行できませんでした。別に釣りに行ったからといって子供の受験に影響が出るわけではないのですが、それはそれ家庭の力学というものがありまして、一年間耐え忍んでいたのです。

今回は、沼津内浦の田内丸でタイ釣りに挑戦です。
いつもは、税理士会の釣り仲間か事務所の釣り仲間と一緒に行くのですが、今回は一人での釣行です。「ゴールデンウィークの中日だからみんな忙しいんだよなぁ。暇なのは俺だけか」などとつぶやきながら、内浦港に到着しました。実は、一人での釣行というのは小心者の私にとっては大いに不安なのです。

十二時半集合、午後一時出船なのですが、余裕をみて十二時ちょっと過ぎに到着しました。集合時間より随分早いのに私以外はすでに船に乗り込んでいました。釣船の場合、どの位置に陣取るかがかなり重要です。一般的に舳(みよし、ふねの先端部分)と艫(とも、船尾部分)が良いとされ、胴(どう、船の中間部分)はあまり釣れないとされています。

「ああ、今日も胴か」と思って、がっかりしたのですが、どういう風の吹き回しか、右舷大艫に陣取ることができました。タイ釣りの場合、この釣り座は常連さんが必ず陣取る一番良い釣り座なのです。今日のタイ釣への期待が一気に膨らみました。

一時半ちょうど、船長の「いいよ~。始めて」の合図で各人一斉に釣り始めます。一投目は大事です。ここで一枚獲ることができれば、その日は、気持ちに余裕を持って釣りができます。慎重に仕掛けをおろし、緊張しながら当りを待っていると・・・。

「あっ、掛かった」。
私の竿ではありません。右舷舳の竿です。大きく弧を描いています。

ちょっと間をおいて、「あっ、掛かった」。
私の竿ではありません。右舷胴の竿です。
大きく弧を描いた竿を操りながら満面の笑みをたたえています。

「次は俺か」。
緊張で頭の血管が切れそうになりましたが、私の竿だけ何の反応もありません。その後、左航でも何人か釣り上げたようです。釣りで一番嫌なのは、こういう状況です。釣り上げた人は余裕で煙草なんかふかしてる。こっちは何で俺の仕掛けにはこないんだと一人悶々としてしまいます。

最初の喧騒が一段落した頃、胴にいたおじさん(70才くらい)が操舵室まで来て船長の後ろから魚群探知機をのぞき込んで、船長と親しげに何やら話し込んでいる。しばらくすると、私の所に来て、「すごい反応があるよ。25mくらいの所だから、仕掛けが12m、でも潮が流れて仕掛けが斜めになるから・・・」と一所懸命に私に教えてくれようとする。

「うるさい」。
思わず口をついて出そうになるのをぐっと飲み込んで、「ああ、そうですね」。素気ない返事を返す。私があまり乗り気ではないのが解かったのか、おじさんは自分の釣り座に戻って、また釣りを始めた。

「あっ、掛かった」。
私のではない。そのおじさんの竿だ。今度のはちょっとでかい。さっきよりも、竿のしなりが激しい。ほとんど円のような状態になっている。「そんなに引いたら仕掛けが切れちゃうよ」と思いつつ、実際にそうなることを心の片隅で思っている自分がみじめだ。

おじさんは、無事釣り上げた。今度のは大きい。5kgくらいだ。5kgのタイというのは普段めったにお目にかかれない代物で、恐ろしいほどの威圧感がある。おじさんは、事もなげに血抜きをして、今度は船長に話しかける。
「ヒロちゃん。反応出てる?」
「ヒロちゃん。潮流れてる?」
「ヒロちゃん。タナは12mでいいの?」。

「あ~っ、うるさい、うるさい、まじめに釣れ!」。

「あっ、きた」。
私の竿だ。血が頭にのぼって、心臓がバクバクいっている。
「きた、きた、きたぁ~」。
思わず叫んでしまった。こいつは獲らねば。慎重に引き上げて、船長がタモ入れをしてくれた。1kgくらいのその日にしては小ぶりのタイだ。こんな小ぶりのタイで大はしゃぎしてしまった自分が恥かしい。でも、うれしい。気持ちに余裕がでてきて、自参したコンビニおにぎりやチーカマを頬張る。釣りで一番楽しいひとときだ。

(つづく)

その後もおじさんは、船がポイントを変えるたびに釣り上げていた。みんないい型だ。3kg以上のタイばかりだ。あんまりおじさんばかりが釣り上げるので私をはじめ周囲の人は不思議がっていた。左舷の大艫に座っていた佐野さんなどは、半分怒りかけていた。それでも、おじさんは意に介せず「もう、クーラーに入りきらないよ」などと善良な釣り人の気持を逆なでするようなことを平気で言っていた。

もうそろそろ日が傾きかけて終盤戦に入った頃、おじさんは5枚目を釣り上げた。そして、操舵室に入って船長とひとしきり話をした後、私のそばに来てこうつぶやいた。「今日は、エサを二匹掛けにするのがいいみたいだなぁ」。ひとり言なのか、それとも、私に教えてくれようとしたのか定かではないが、また自分の釣り座に戻っていった。

「あっ、きた」。
おじさんの竿だ。参った。今日一番大きいタイだ。
「これで6枚目か。今日はどうなっちゃってるんだろう。せっかく大艫に座ったというのに、俺はたったの1枚。これじゃ胴に座った方がよかったのかな。それとも、俺が下手なのかな。それとも、ビールなんて飲んじゃったのが悪いのかな」。色々なことが頭の中を駆け巡る。

「あっ、きた」。
私の竿だ。今度のはでかい。どんどん糸がもっていかれる。なかなか浮いてこない。竿先がガクガクいっている。ハリスが3号だから大丈夫かな。あんまり走られると、お祭りしてバラしそうだ。ハリスをたぐって、もうちょっとの所まで来ても、海中にグイグイ引っぱられる。ハリスをすべらして、また、たぐり上げる。海面に浮かして、船長にタモ入れしてもらう。やった。釣ったど~。

船長に量ってもらったら、2.6㎏でした。5㎏には遠く及ばないけど、その日はこれで充分でした。実はこの一枚は、エサを二匹掛けにしたら釣れたのです。つっけんどんにしてごめんなさい。おじさんは、私に大事なことを教えてくれようとしていたのに、やっかみの気持ちでいっぱいで、素直にアドバイスを聞けなくて。名前も聞けず、お礼も言わずに帰ってきてしまいました。

この場を借りてお礼を申し上げます。「ありがとうございます。ヒロちゃんの友達のおじさん」。また、会えますよね。

(おわり)

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2009年5月15日 10:49に投稿されたエントリーのページです。

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